田中敦子は複数の円を基調として描いた絵画が有名だが、それは「電気服」という電球を何個も洋服に取り付けたパフォーマンスにあるように、電球と配線を象徴させている。最近僕が見た彼女の作品は、年明け頃開かれていた東京国立近代美術館での「痕跡」展でのことで、作品名は《Round on Sand》(1968年)だった。浜辺でピッケルを持った彼女が、延々砂地に円を描いているビデオ作品。巨大な円は次第に波にさらわれ消えていく。それにもかかわらず取り付かれたように描き続ける様が、なんとも異様で、はかなくもあった。
高齢化故に具体の作家もだんだん少なくなってきている。一方彼らの作品も、その多くを所蔵する芦屋市美術館の閉館問題で散逸の危機にさらされている。最近「もの派」を再考しようという企画が各地で起こっていたが、それより一世代前の「具体」というムーヴメントも、もっと再考されてしかるべきだと思う。
ご冥福をお祈りいたします。