罔両(うすかげ)が影にむかって問いかけた。
「君は先ほどは歩いていたのに今は立ち止まり、先ほどは座っていたのに今は立っている。なんとまあ節操のないことだね」
影は答えた。
「僕は(自分の意思でそうしているのではなくて、)頼るところ(人間の肉体)に従ってそうしているらしいね。
(ところが)僕の頼るところはまた別に頼るところに従ってそうしているらしいね。僕は蛇の皮や蝉のぬけがら(のようなはかないもの)を頼りにしていることになるのだろうか。
さて、なぜそうなのか分からないし、なぜそうでないのかも分からないね。」※ 罔両――影のまわりにできる薄い影。当然、影の動きにつれて動く。(「斉物論」金谷治訳注『荘子 内篇』岩波文庫所収)
2011年08月28日
罔両問景
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